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「ティール組織」読書メモ

組織の発達段階

名称 特徴
神秘的 マゼンタ 自己と他者が区別されるが、中心は自分。物事の因果関係の理解が不十分で神秘的。 部族
衝動型 レッド 恐怖による支配。自他の区分、単純な因果関係の理解により分業が成立。 ギャング、マフィア
順応型 アンバー 時間の流れによる因果関係を理解し、計画が可能に。規律、規則、規範による階層構造の誕生。 教会、軍隊
達成型 オレンジ 「命令と統制」から「予測と統制」。実力主義の誕生。効率的で複雑な階層組織。 企業
多元型 グリーン ボトムアップの意思決定。多数のステークホルダー 非営利組織
進化型 ティー 自主経営、全体性、存在目的 一部の企業

達成型組織と進化型組織の構造・慣習・プロセスの比較

構造

項目 達成型 進化型
1.組織構造 ピラミッド型の階層構造。 ・自主経営(セルフマネジメント)チーム
・必要に応じて、コーチ(収益責任を負わず、管理上の権限も持たない)がいくつかのチームを担当する。
2.調整 (トップ経営陣から下部組織に至るまで)すべての階層で行われる定められたミーティングで調整が行われる。結局朝から晩までミーティングになることも珍しくない。 ・経営チームによるミーティングはない。
・必要が生じたときに調整が行われ、ミーティングが開かれる。
3.プロジェクト 複雑な状況を管理し、経営資源に優先順位をつけるための重い仕組み(プロジェクト・マネジャー、ガントチャート、計画、予算など) ・徹底的に簡素化されたプロジェクト管理。
・プロジェクト・マネジャーはおらず、プロジェクトに必要な人材は自分たちで集める。
・計画や予算は最小限で(あるいは全くなく)、自発的に優先順位付けがなされる。
4.スタッフ構造 人事、IT、購買、財務、管理、品質、安全、リスク管理など、おびただしい数のスタッフ機能。 ・そうした機能の大半は各チームで、あるいは自発的なタスクフォースが担う。
・ごく少数のスタッフ機能は助言のみを行う。

人事関連

項目 達成型 進化型
1.採用 人事の専門スタッフが採用面接を行い、職務記述書の中身が重視される。 将来一緒に働くかもしれない社員たちとの面談で、組織と組織の存在目的が重視される。
2.オンボーディング -(大半が管理面に関するオンボーディング・プロセス) ・人間関係と組織文化に関する徹底的な研修。
・組織の溶け込むためのローテーション・プログラム。
3.教育研修 ・研修内容は人事部が設計。
・仕事上のスキルや経営の訓練が大半。
・研修は自由に自己責任で受ける。
・社員全員が参加する組織文化構築の研修が極めて重要。
4.役職と職務内容 どの仕事にも役職があり、職務内容は決まっている。 ・役職はない。
・決まった職務内容の代わりに流動的できめ細やかな役割が多数存在する。
5.個人の目的 -(従業員が社員個人の人生でなすべき使命を見つけ出すための支援をするのは組織の役割ではない) ・個人の使命と組織の目的の交差点を探るために、採用、教育、評価制度が用いられる。
6.柔軟性と業務時間の取り決め ・仕事にかけられる時間と自分が生活のうえで大事にしているほかの時間との割合についての誠実な話し合い。
・約束(コミットメント)が守れている限り、労働時間には高い柔軟性がある。
7.実績管理 ・個人のパフォーマンスに注目する。
・評価は組織階層上の管理職によって決められる。
・評価面談は、過去の実績を客観的な視点だけの断片で調査する。
・チームのパフォーマンスに注目する。
・個人の評価は同僚間の話し合いに基づいて(ピア・ベース)決定される。
・評価のための面談は、その人がこれまで何を学んだか、その人の使命は何か、一人一人と探索する。
8.報酬 ・組織階層上の管理職によって決定される。
・個人のインセンティブ
実力主義により、社員の給料には大きな差がつく場合がある。
・基本給については、ほかの社員とのバランスを考えながら自分で定める。
・賞与はないが、全社員平等の利益分配がある。
・給与の差は狭い。
9.任命と昇進 ・少ない昇進機会をめぐる熾烈な争いが政治的駆け引きや秩序を乱す行為を生む。
・縄張り争い――一人ひとりのマネジャーが自分の城の王となる。
・昇進はないが、同僚間の話し合いに基づく(ピア・ベース)流動的な役割の再配分がある。
・自分の権限外の問題について率直な意見表明をする責任がある。
10.解雇 ・管理職が(人事部の承認を得たうえで)部下を解雇する権限を持っている。
解雇はほとんどが法的、金銭的プロセス。
・解雇は仲介者の入る紛争解決メカニズムの最終段階。
・実際には極めてまれ。
・解雇を学習機会へと転換する思いやりのある支援。

日常生活

項目 達成型 進化型
1.オフィス空間 ・標準化された、面白みのない社屋。
・多すぎるほどの職階
・自分たちで飾り付けた、あたたかい雰囲気のスペース。子供たちにも、動物にも自然にも開放されているオフィス。
・職階が全くない。
2.ミーティング -(ミーティングの数は多いが、ミーティングでの慣行はほとんどない) エゴを抑え、全員の意見に耳を傾けられるような、具体的な慣行がある。
3.意思決定 ・組織ピラミッドの上位でなされる。
・どのような意思決定も組織階層の上部から却下される可能性がある。
助言プロセスに基づき完全に分権化(あるいはホラクラシー的な意思決定の仕組み)。
4.紛争 -(紛争はうやむかにされることが多く、紛争解決の仕組みはない) ・紛争を明らかにし、対処するための時間が定期的に定められている。
・複数の段階を踏む紛争解決の仕組みがある。
・全員が紛争対処の訓練を受けている。
・紛争は当事者と仲介者以外には知らされず、部外者が引きずり込まれることはないという文化がある。
5.情報フロー ・情報は力であり、知る必要がある場合に開示される。
・外部に対して秘密を守ることが当たり前。
・会社の財務や報酬を含め、あらゆる情報はいつでも、だれでも入手できる。
・外部に対して完全に透明で、存在目的をうまく達成するために部外者からの提案が歓迎される。
6.価値観 -(組織の価値観は額に入って壁に飾られているだけのことが多い) ・明確な価値観が、組織内で受け入れられるあるいは受け入れられない行動や態度の基本ルールとして具体化され、働く人々にとって安全な環境を守ろうとしている。
・価値観と基本ルールについての議論を深めるためのルールや慣行。
7.内省のための空間 ・静かな部屋
・集団での瞑想と沈黙の慣行。
・大集団での振り返り会。
・チームによる管理と仲間同士のコーチング。
8.気分管理 どのような気分が組織の存在目的に資するかを常に感じ取る。
9.コミュニティーの構築 自分をさらけ出してコミュニティーをつくるための物語る(ストーリーテリング)練習。

主な組織プロセス

項目 達成型 進化型
1.存在目的 -(存在目的に耳を傾けるルールや慣行はない。競争の中でいかに生き残るかが意思決定の主な原動力) ・組織は自らの存在目的を持った生命体として見られている。
・競争という概念は組織行動に無関係。「競合他社」を受け入れ、共に存在目的を追求する。
・組織の存在目的に耳を傾ける慣行がある。
- 誰もがセンサー(感知器)。
- 大集団でのプロセス。
- 瞑想、誘導ビジュアライゼーションなど。
- 外部からの働きかけに対する反応。
2.戦略 戦略は組織のトップが決める。 戦略は自主経営(セルフマネジメント)マインドのある従業員の集団的な知性から自然発生的に現れる。
3.イノベーションと製品開発 ・アウトサイド・イン――顧客の調査と顧客セグメンテーションが提供商品/サービスを決める。
・必要に応じて顧客ニーズがつくられる。
インサイド・アウト――何を提供するかは存在目的によって定まる。
・直観と美によって導かれる。
4.サプライヤーの管理 サプライヤーは価格と品質で選ばれる。 サプライヤーは存在目的への適合度で選ばれる。
5.購買と投資 ・組織内の階層に応じた限度額。
・投資予算はトップ経営陣から鑑賞される。
・誰でもいくらでも使うことができる。ただし助言プロセスは尊重される。
・チームの投資予算は同僚間の話し合いに基づいて(ピア・ベース)決定される。
6.営業とマーケティング ・ブランドは顧客セグメンテーションに合うように決められる。(アウトサイド・イン)。
・営業部隊は目標とインセンティブでけん引される。
マーケティングは単純な提案――「これは世界に対する私たちの提案です」(インサイド・アウト)。
・営業目標はない。
7.プランニング、予算策定、管理 ・「予測と統制(コントロール)」に基づく。
・中期計画、年次予算、月次予算という厳しい周期。
・計画への固執がルール。逸脱した場合には説明が必要で、足りない分は埋めなければならない。
・従業員にやる気を出させるための野心的な目標。
・「感覚と反応」に基づく。
・予算や予実分析はまったくないか、極端に簡素化されている。
・「完璧な」答えを探すのではなく、実用的な解決策と高速反復。
・何が必要かを常に感じ取る。
・目標数値はない。
8.環境と社会への取り組み ・事の本質とは無関係な「金額的基準」――「コストがかかりすぎない限りにおいて取り組む」。
・業績への影響を考慮しながら経営トップだけが取り組み始めることができる。
・本質的な基準としての「誠意さ」――「なすべき正しいことは何か?」。
・何をするのが正しいかを誰もが感じ、誰もが取り組みを始められる。
9.変更管理 組織をA地点からB地点に動かすための変革ツールが用意されている。 -(組織は環境変化に合わせて常に内部から変化しているので、「変革」は意識していない)
10.危機意識 ・少人数で構成される顧問団が秘密裏に会合し、CEOのトップダウンによる意思決定を補佐する。
・社員への伝達は判断が下されるときだけ。
・関連する人であればだれでも、集団的な知性に頼ってベストな反応を得られることができる。
・助言プロセスを停止しなければならないときには、停止の範囲と期間が定められる。